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Jun.15.2010

 会員を知る:シリーズ”私の仕事”

Vol.12 美津石紘詩さんに聞く・・・キルンワークの分野から


今回はキルンワークで重厚感あふれる作品をつくり続けていらっしゃる美津石紘詩さんです。

聞き手は神田理事です。 秩父の山が望める、小高い丘の閑静な住宅地。裏側は一軒も無いので眺めは最高だ。埼玉県飯能市にある美津石紘詩さんの工房を訪ねた。同じ西武池袋線沿線に住む自分としては小学生の頃の遠足で何度も来たなつかしい地域でもある。

1 以前、ワコール銀座アートスペースでの美津石さんの個展会場で、工房風景の写真がさりげなく、カッコ良く、ディスプレーされているのを見て“さすがデザイナー!”ととても印象に残っていました。ぜひ見学させて頂きたい、と長い間思っていました。
また、多摩美の先輩であり企業のインハウスのデザイナーである美津石さん。もともとグラフィックデザイナーを志望していた私としては、美津石さんのライフスタイルにとても興味を持っていました。
ガラス以外のデザイナーとして第一線でお仕事をされながら、重厚なガラス作品をつくり続ける美津石さんはガラス工芸協会の中でも稀有な存在だと思います。 現在のお仕事の内容を教えてください。

=パッケージデザインのアートディレクター、デザイナーとして主にお酒のメーカーの仕事をしています。なかには20年以上のお付き合いをさせていただいているメーカーさんもあり、多くの商品デザインに携わっています。

「ジャパニーズグラフィック」(ドイツ、タッセン社出版)というデザイン年鑑をはじめ、何冊もの美津石さんが手がけられたデザインが載っている本を見せて頂く。佐藤卓氏、佐藤可士和氏などそうそうたるデザイナーと共に三石さん(御本名)の作品が並ぶ。普段ビール、ワイン好きの私が珍しく、デザインが気に入って買った事のある焼酎“神の河(かんのこ)”がなんと美津石デザインだったとは!デザインの力はすごい!

2 デザインのお仕事とガラス制作が影響され合う事はありますか?
=基本的にはありません。 デザインとガラス制作のキャリアを全く別とするために名前も変えて活動しています。
パッケージデザインではもちろんボトルのデザインも含まれますが、それは商品デザインのトータルの一部であって商品コンセプトに基づいてデザインされたものです。
ただ商品が完成していく過程で、様々な角度からモノを見てデザインコンセプトを掘り下げていくプロセスでは、ガラス制作にも役立っているかも知れません。
私にとってデザインとガラス制作はどちらも必要なものです。

3 ガラス制作を始めるきっかけは何だったのですか?
=1990年代に日本各地で大規模なガラス展が多く開催されましたよね。その頃は勤務地が大阪だったので大丸梅田店で観た「世界現代ガラス展」にとても感銘を受けました。ガラスといえば吹きガラスのうつわ、というイメージしか無かったので彫刻、アートとしてのガラスに興味を引かれました。

4 勉強はどうされたのですか?
=京都駅ちかくにあったNHKのカルチャースクールでゼロから学びました。パート・ド・ヴェールが中心だったと思います。そのあとはほぼ独学で由水さんの「パート・ド・ヴェールの技法」などを参考にしながら作品を作り始めました。そしてさらにのめり込み、家に工房を作りました。その後本社勤務となった事に伴い、現在のこの地に10年前に住居、工房を建てました。
初めての作品発表が1995年でした。16年前です。もし20才でガラス制作を始めていれば現在36才です。
彫刻家の佐藤忠良さんは、作品が一番充実する時期は45才頃だと語っています。技術が身につき、気力、体力がまだまだ充実しているということでしょう。 私もまだ9年あります。もう少し良いものができるのではないかと思っています。

5 工房はとても広くきれいに整理されていますよね・・・。(タメ息・・・)広さ、設備等教えてください。
=電気炉15Kw 2基、10Kw 1基、5Kw 1基です。あとはサンドブラスター、研磨機、ウォーターサンダーなどです。広さは20坪です。

6 ずいぶん縦長の電気炉もありますね。あまり見た事が無いですね。
=かたまりの作品が多いので湯口分のガラスのスペースが必要な為です。

7 御多忙のなか、どのようなペースで制作されていますか?
=当然、土日が中心となりますが、長期、短期休暇などもほとんどすべて制作にあてています。9割以上はガラス制作だと思います。

8 うつわはつくらないのですか?
=つくりません。大小の差はありますがオブジェだけです。やはり初めてガラスから受けた感動をそのままに、それを表現していこうという熱望はずっと続くのだと思います。

9 本棚にある分厚いスケッチブックが気になるのですが・・・。
=これは今まで制作してきた記録です。書いておかないとわからなくなりますから。

B4ほどの厚さ3cm位あるスケッチブックに鉛筆でとても細かく制作の過程が描かれているのに驚嘆!4冊ほとんどびっしり温度データ、スケッチなど記録されている。いきあたりバッタリ、半ば感覚?(良く言えば)で、慣れで仕事をしてきている自分が恥ずかしくなった・・・。

10 最後に何か協会に望む事をお聞かせください。
=いえいえ、とてもそんな・・・。自分自身に望みたい事はたくさんありますが。とにかくガラス界は90年代のような派手さは無くなりましたよね。これからどうなっていくのか・・・。今後本当の力量が個々に問われていくのだと思います。

今日はどうもありがとうございました。とても刺激になりました!前回の「日本のガラス展」は引越などと重なりご参加できなかったとの事ですが、次回は会場も新鮮な所になります。新作楽しみにしています!

今までにつくりためた作品が、未発表のまま倉庫にあるそうだ。ぜひ近い将来、個展として拝見したいものだ。
オールドローマンスタイルでMITSUISHIとパート・ド・ヴェールでビシットつくられた表札を見つつ“もっとウチの工房きれいにしなければ・・・”とため息をつきながら美津石さん宅をあとにした。


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