■1972年、当協会が設立されてから昨年で20年目を迎えました。当時ガラス工芸の−材料であり、また春から夏のものという季節的な観念が社会一般に残っていた時代でした。現在は工芸の枠を越え、ガラスが新しい造形素材として我々に接する時代になりました。ガラス造形を専門に教育する学校、研究所も年々増加し、それに伴う個人作家の台頭、ガラス美術館の設立、ガラスに関する書籍も数多く出版されるなど、一般社会のガラスヘの関心が非常に高くなって釆ました。年間を通じ常時ガラスの展覧会が催される現状は夢のような進歩発展だと思います。これら発展の陰には、当協会員が数多く参加協力していることは喜ばしい限りです。しかし反面、ガラスを観光的に取り上げ、物産として製作販売し、利潤のみを追求するように見える所もあるのは少々残念ですが、これも一時的な現象で、ガラスが社会的に大きく理解されていく段階と思います。
 当協会が設立20周年記念として、「’93日本のガラス展」を開催することは、高度な日本のガラス文化の姿を国内外に発表する訳で誠に意義ある事と思います。審査員を協会理事の他、外部より横浜美術館、武田厚氏、海外よりパリ装飾美術舘、オリピエ氏に依頼し、より厳正で視野の広い審査を行ないました。出品作家は正会員と準会員90名、国内応募多数より厳選した19名、海外から10名の招待作家から成り、総点数160点前後で日本のガラス造形芸術の最も水準の高い展示になると思っております。会場も前回より1力所多く、東京・大阪・福岡と3会場を巡回し来春一部作品ニューヨーク、ヘラー・ギャラリーで展示されます。
 この協会展が日本のガラス文化の発展に大きく貢献し、また世界のガラス界からも高い評価を受けると確信しております。「’93日本のガラス展」を開催するにあたり、種々な面で多大なご理解とご協力をいただいた文化庁、朝日新聞社、日本硝子製品工業会、サントリー美術館、フリヂストン美術館ほか関係各位に対し厚く御礼申し上げます。並びに東京会場・小田急百貨店、福岡会場・岩田屋百貨店、大阪会場・大丸百貨店に対しても深く感謝いたします。

 1993年
 日本ガラス工芸協会会長
 日本芸術院会員
 藤田喬平


○東京展
会 期 :1993年9月1日(水)−9月12日(日)
会 場 :小田急美術館 東京新宿
主 催 :日本ガラス工芸協会
後 援 :文化庁、朝日新聞社
協 賛 :日本硝子製品工業会

○巡回展
会 期 :1993年10月13日(水)−18日(月)
会 場 :大丸ミュージアム・梅田、大阪
会 期 :1993年10月20日(水)−25日(月)
会 場 :天神岩田屋、福岡
会 期 :1994年2月5日(土)−27日(日)
会 場 :ヘラー・ギャラリー、NY

○ 93日本のガラス展実行委員会
実行委員:藤田蕎平、柴崎信太郎、上山俊一、上野幸男、柏原宏行、倉本陽子、栗田保久、小林 貢、藤田 潤、横山尚人
審査員 :武田厚(横浜美術館)、ジャン・リック・オリビエ(パリ装飾美術館)、会員理事会
撮 影 :矢澤一之、平井亮介

■受賞作品:日本ガラス工芸協会賞、朝日新聞社賞、サントリー美術館賞、ブリヂストン美術館賞
左から
朝日新聞社賞・山野宏「FROM EAST TO WEST」/サントリー賞・藤原誠「遺跡#45」/ブリヂストン美術館賞・渋谷良治「海の寝殿93-1」
■受賞作品:佳作
 左から 伊藤孚「人の形」/西悦子「レース ケージ'93」/室伸一「山が…」
■受賞作品:海外特別賞
トーマス・パティ「Lumina Burgundy with Three Rings 1992」(USA)
■招待作品:海外ガラス作家作品は、<出版物紹介>93年図録にてご覧下さい。
▲top