■1972年、当協会が設立され今日に至るまで4分の1世紀が過ぎました。設立当時の会員の多くが、ガラス企業に属するデザイナーであり、その中で作家活動をしている人もありましたが、フリーの作家は極めて少数でした。現在は約半数の会員がフリーの作家であり、年を経るごとに構成が変化しております。今後ますますこの傾向は強まることと思います。このことは当会が企業から個人作家の集団へと移行してゆく様に思われますが、車の両輪のごとく両者が融合しおたがいに切磋琢磨してこそ、はじめて日本の新しい現状が生まれるものです。あまり片方にかたよる事は好ましいことではないと思っております。また女性の進出もめさましいものがあります。ガラスという多様な素材が女性作家の個性ある表現を可能にし、社会に受容されている証でしょう。
 当協会展は国内のみならず世界のガラス芸術界に日本の現在のガラス造形の動向を発表するもので、世界からも非常に注目されている展覧会である事は申すに及びません。前回(93)は当協会設立20周年の記念展として催されましたが、今回は新たなる出発点として「響きあう光と影」をテーマに会員が新鮮な心意気で制作に取り組みました。審査員も内部より3名、外部より友部直氏、武田厚氏にもご依頼し、より広い視野に立って厳正な審査を行いました。出品作家は正会員、準会員81名。国内公募作家として公正なスライド審査のうえ24名を選出し、海外より著名作家の他日本に未だ広く知られていない作家も含め8名の作家を招待し、総数113点を展示しております。今回の会場は諸般の事情で東京の小田急美術館のみなのは誠に残念です。
「’96日本のガラス展」を開催するにあたり種々の面で多大なご理解とご協力をいただきました文化庁、朝日新聞社、日本硝子製品工業会、フリヂストン美術館、小田急美術館に対して深く感謝をいたします。

 1996年
 日本ガラス工芸協会会長
 日本芸術院会員
 藤田喬平


会 期 :1996年9月4日(水)〜15日(日)
会 場 :小田急美術館 東京新宿
主 催 :日本ガラス工芸協会
後 援 :文化庁・朝日新聞社
協 賛 :日本硝子製品工業会
協 力 :ブリティッシュ・カウンシル
出品者 :会員・準会員81名、海外招待作家8名、入選公募作家24名
内 容 :サブタイトル〜響きあう心〜で制作する113作品の展覧

○ 96日本のガラス展実行委員会
委員長 :柴崎信太郎
審査委員:友部 直・武田厚(外部審査員)、会員審査委員3名
委 員 :岩崎隆、上野幸男、上山俊一、倉本陽子、栗田保久、小林 貢、藤田 潤、吉本由美子、横山尚人
事務局 :竹永幸代
撮 影 :矢澤一之

■受賞作品:日本ガラス工芸協会賞、朝日新聞社賞、小田急美術館賞、ブリヂストン美術館賞
左から
日本ガラス工芸協会賞・佐藤万里子「ザ・フトン」/朝日新聞社賞・鈴木洋志「再再」(準)
/小田急美術館賞・岩田触「月下落水」/ブリヂストン美術館賞・藤田順「風の道」
■受賞作品:佳作
左から 上野幸男「間」/藤巻晶子「4っの物語」/米原眞司「朱の連鎖」
■招待作品:海外ガラス作家8作品は、<出版物紹介>96年図録にてご覧下さい。
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